職能給と職務給とは!?ジョブ型雇用を理解する!メリットデメリットをご紹介!

2022.05.19

職能給と職務給の違い

(画像は弊社人材開発用語集より抜粋)

職能給とは、会社が従業員の給与を決めるにあたって、人そのもの、つまり職務に従事する社員の「能力」を評価対象として、その評価に応じて賃金を決定する方法です。日本の雇用慣行である「新卒一括採用」「長期雇用」「年功序列」といった日本型雇用における給与体系の中心となっています。勤続年数が長くなればなるほど給与が上昇し、その分「終身雇用」を前提とした社内人材育成が進んでゆきます。その結果、従業員はいわゆるジェネラリストになり、例え配置転換されても給与に変更を生じないのが基本となっています。

一方で、職務給は、従業員が従事する職務や業務の種類によって給与を決定する方法であり、「欧米型雇用」とも呼ばれています。日本でも昨今、「従業員」を基準とするのではなく、「仕事」を基準として評価制度を採用する会社が増加しています。ちなみに、パートタイマーや派遣社員も職務給と言えます。つまり、勤続年数にかかわらず、与えられた職責によって給与が増減したり、或いは配置転換や職種変更によって給与体系が変わるということです。その結果、従業員の能力が外部でも磨かれるためスペシャリストとなり、会社への依存度合いが低くなり、人材の流動化が進むことになります。いわゆるジョブ型雇用というのは職務給の考え方である。

(画像は弊社人材開発用語集より抜粋)

年功序列的な運用に陥った職能給

日本では高度経済成長期以降、長らく職能給が広く用いられてきました。職能給では、個人の属性、特に能力によって賃金が決定されます。従業員の能力は向上するという前提の下で、社員に様々な職務を経験させやすいというメリットがあります。また従業員の側も、勤続年数で給与が上昇していく仕組みにより、50~60代になれば自ずと高給になるため、長く同じ企業に勤め続けることを目指すようになります。実力主義のように競争をする必要がないので、日々の業務を安心して遂行できることがメリットと言えます。雇用側の視点からも、これは従業員の離職率低下につながります。

その一方で、能力評価が適切に行われない場合、年齢を重ねると能力が高まるという前提は、年功序列的な運用に陥りがちになります。それに加えて、景気後退や社員の高齢化に伴い、職務内容に比べて高い賃金の社員が増えることになり、日本企業の人件費が増大して経営を圧迫する要因の1つとなってしまったのです。

職務給のメリットとデメリット

欧米諸国で広く採り入れられている職務給は、社内のすべての職務について、その価値、難易度、就労条件などを測定して職務分析を行い、その結果に基づいて定められた職務の序列、つまり職務評価を反映して決定されます。職務ごとに賃金があらかじめ決まっており、そこに社員が当てはめられる仕組みと言えます。したがって、同じ仕事は誰がやっても同じ賃金となり、また基本的に定期昇給という概念がなく、同じ仕事をしている間は賃金の上昇はありません。従業員はより条件の良い職位を求めて昇格するか、あるいは転職することで自らの賃金価値を上げてゆきます。

従業員側のメリットは、良い結果を出すために自らの業務の専門性向上に努めたり、成果に見合った給与が得られれば高いモチベーションを維持できたりすることになります。一方で、成果が上がらなければ給与が上がらないため、従業員の会社に対する忠誠心が低下する恐れがあります。また企業側にとっても、従業員を適正に評価する為、一人ひとりにたいしてカスタマイズした細かい評価を行わなければならず、その運用コスト自体も高くなりがちなところがデメリットです。

日本型職務給

日本では2000年頃から、個人の働きに見合った給与を実現するために、職能給の見直しが多くの企業で行われました。給与を決定する要素として、客観的な評価がしづらい能力から、より評価が遂行しやすい成果に置き換えようという動きが起こり、成果主義へと移行していきました。職務を通じた具体的な成果に基づき、給与を決定する考え方であり、職務給を上手く取り入れた例も多々あります。こうした改革によって年功的運用がなくなった反面、個人の職務が生み出す成果にこだわるあまり、チームワークや後輩の育成が疎かになったり、新しい仕事の開拓よりも目先の成果の追求が重視されすぎたりといった弊害も指摘されています。

そこで日本企業では、純粋な職務給・職能給から、職務を通じた短期の成果と同時に、能力向上を通じた中長期の成長可能性や組織への貢献など、多面的な要素を評価して給与が決定される動きも出てきています。

用語解説一覧

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