キャリアドリフトとは!?金井教授によるキャリアの描き方!

2022.05.02

キャリアドリフトとは

(画像は弊社人材開発用語集より抜粋)

「キャリアドリフト」とは、自身のキャリアの道筋を詳細に決める事をせず、時には起こる変化を享受し、自然の流れに身を任せながらキャリアを歩んでゆく考え方のことです。

自分のキャリアに大まかな方向付けさえできていれば、人生の節目ごとに次のステップをしっかりデザインするだけで良く、その節目と節目の間は、偶然の出会いや予期せぬ出来事をチャンスとして柔軟に受け止める、つまり、あえて状況に“流されるまま”でいることも必要であるという考え方を言います。このドリフト(drift)とは「漂流する」という意味です。

キャリアドリフトは、神戸大学大学院の金井壽宏教授が提唱するキャリア理論のひとつであり、同教授によると、職業人生はキャリアデザインとキャリアドリフトの繰り返しであると考えられています。

キャリアデザインとキャリアドリフト

(画像は弊社人材開発用語集より抜粋)

就職、転職、異動、転勤――春は多くの人々が、新しい人生の節目に直面する季節です。キャリアという意味で誰もが最初に迎える節目は、学校を卒業して就職し、新社会人になるという時期ですが、そこから先、どんな節目がいつ、どういう形でやってくるかには当然、個人差があります。こうなりたいという内発的な動機や意志に基づき、自ら進んで迎える節目がある一方で、例えば病気やけが、親の介護などの家庭の事情、勤務先の倒産といった理由で転職や休職、配置転換を決めざるを得ない場合も少なくありません。これは外的な環境変化がもたらす節目といえるでしょう。

内的要因・外的要因に関わらず、大きな変化を伴う節目は誰の人生にも数年ごとに訪れ、決断を迫られます。そんな節目に直面した時にこそ、自分が本当にやりたいことや好きなことは何であるのかと深く内省し、自らの中長期的なキャリアを主体的にデザインしていくべきである、と提唱するのが金井壽宏教授の「キャリアデザイン理論」です。

しかし金井教授は、単に節目におけるキャリアデザインの重要性だけを主張しているわけではありません。表裏一体をなす形で、キャリアをあえて“デザインしない”ことの重要性もまた主張しています。これが「キャリアドリフト」の概念です。

流される必要性

キャリアを歩んでゆく中で、特に節目のない時期にも、自分のキャリア方向性の決定に固執するのではなく、予期せぬ偶然の出来事や出会いも柔軟に受け止めながら、状況に「流されてみる」ことが必要です。

なぜなら、常に自分自身と真剣に向き合い、キャリアについて考え続けていると、詳細な計画を立てることに終始したり、計画自体に囚われて視野が狭くなってしまうことがあります。また、「自分が本当にしたいことは何か」と日常的に追求し続ける働き方、日々の過ごし方によっては生産性を損なう可能性もあります。まして変化の激しい昨今、20年先、30年先の将来まで見通した上で、キャリアを詳細にデザインするのは非常に困難です。

そこで、計画に囚われることなく変化の波がやってきたらその上でひとまず漂ってみること、そこに流れてきた偶然の機会を活かし、全ての環境の変化に対して柔軟に対応できるよう、その中に自分の身を置いてみるのです。そうすれば、自分の内面より周囲の状況がよく見えるようになり、自らのアンテナが研ぎ澄まされ、自ずと偶然の出来事や出会いに敏感になって、自分が頑なに固執していたキャリアの方向性以外にも視野を広げることが出来ます。

つまり、「敢えてデザインしないこと」が大切になってくるのです。

補足:「計画的偶発性理論」

敢えてデザインしないキャリアの根拠には、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ名誉教授が20世紀末に提唱したキャリア理論である「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」があります。そこでは、「個人のキャリアの80%は、予想できない偶発的な出来事によって成り立っている。その偶然を計画的に設計し、自分のキャリアを創造していくことが重要である。」としています。予期せぬ偶然の出来事のたびにベストを尽くすという経験の積み重ねで、より良いキャリア形成が行われるのです。これはまさに、キャリアドリフトに通ずるものではないでしょうか。

キャリアドリフトは、キャリアデザインによって主体的に創り上げた自己を現実に適応させ、その可能性をより大きく広げるプロセスとも言えるでしょう。キャリアデザインとキャリアドリフトは相反する概念ではなく、その両方を繰り返すことで、柔軟かつ理想のキャリアに近づいてゆくことが出来るのです。

用語解説一覧

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