計画された偶発性理論とは!?キャリアは偶然の産物である!!

2022.01.19

計画された偶発性理論とは

(画像は弊社人材開発用語集より抜粋)

「計画された偶発性理論」(Planned Happenstance Theory)とは、米スタンフォード大学の教育心理学者であるジョン・D・クランボルツ教授(John D. Krumboltz)によって1999年に提唱されたキャリア理論です。個人のキャリア形成は予期せぬ偶発的な出来事に大きく影響されるものであり、その偶然に対して最善を尽くし、より積極的な対応を積み重ねることによってステップアップできるという考え方を指しています。

クランボルツ教授らが米国の一般的な社会人を対象に行った調査によると、18歳の時になりたいと考えていた職業に現在就いている人の割合は、全体のわずか2%にすぎなかったということです。また、社会的成功を収めた数百人のビジネスパーソンについて、同教授がそのキャリアを分析したところ、約8割の人が「自分の現在のキャリアは予期せぬ偶然によるものであった」と答えたそうです。こうした研究データに基づいて構築されたのが、プランド・ハップンスタンス(Planned Happenstance)=「計画された偶発性」の理論です。

既存のキャリア形成論における限界

20世紀末に発表されたこの理論が米国で注目を集めた背景には、「自分のキャリアは自分自身で計画し、意図的に職歴を積み上げて形成するものである」という従来のキャリア論の限界が見受けられるようになってきたからです。それまでは自分の興味や適性、能力、周囲の環境などを合理的に分析すれば、目指すべき最終ゴールやそこへ至るステップアップの道筋までが明確になると考えられてきましたが、実際にはそうしたアプローチが必ずしも有効とは限りませんでした。

経済のグローバル化が急速に進み、IT技術の進歩が目覚ましい中、将来に起こる出来事を予測する事は非常に難しくなっています。企業社会の状況も、個人の意思でコントロールができるわけではありません。むしろ変化の激しい時代において、あらかじめキャリアを計画したり、計画したキャリアに固執したりすることが非現実的になってきています。外的な要因によって計画通りに進まないことも多々あります。

そのような時代背景では、「自分が何をしたいのかという目的意識や意思決定にこだわり、一つの仕事や職業を選び取ることは、目の前に現れた予想外の機会を見逃し、それ以外の可能性を捨ててしまうことにもなりかねない」とクランボルツ教授は指摘しています。

「計画された偶発性理論」の概念

(画像は弊社人材開発用語集より抜粋)

「計画された偶発性理論」では、個人のキャリア形成をもっと幅広くとらえ、上述のクランボルツ教授による調査分析の通り、その8割が予期しない出来事や偶然の出会いによって決定されると考えられています。重要なことは、その偶然を避けるのではなく、当人の主体性と努力によって最大限に活用することなのです。さらには予期しない出来事をただ待つだけではなく、自らその機会を創り出せるように積極的に行動したり、周囲の出来事に神経を研ぎ澄ませたりして、偶然を意図的・計画的にステップアップの機会へと変えていくべきであるというのが、同理論の中心となる考え方です。つまり、オープンマインドというスタンスを常に有していることが大切なのです。

これを実践するために必要な行動指針として、クランボルツ教授は次の五つを挙げています。

■「好奇心(Curiosity)」:絶えず新しい学習の機会を模索し続けること。

何事にも好奇心を持ち、あらゆることに挑戦したり、出来るだけ多くの場所に足を運んだりすれば、チャンスとの遭遇が増えるのです。

■「持続性(Persistence)」:失敗に屈せず、努力し続けること。

努力を継続的に続けることは大切です。いつどのような機会が巡ってきても良いように、自分の目標に向かって努力を粘り強く続けて、十分な力を蓄えておくことが機会獲得につながります。

■「楽観性(Optimism)」:新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考えること。

「失敗したらどうしよう」という不安は捨て、「何とかなる」「大丈夫」と物事をポジティブに捉える思考を身に付けていれば、自ら偶然の出会いを積極的に探しに行こうと行動を起こし、それをつかみ取る可能性が高まります。

■「柔軟性(Flexibility)」 :こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること。

視野が狭くなると、折角訪れたチャンスを見逃してしまいます。目の前で起こった出来事や新しい出会いに対して、自分には関係ないと決めつけず、様々な可能性を想定する心構えを持つことが大切です。

■「冒険心(Risk Taking)」:結果が不確実でも、リスクを取って行動を起こすこと。

大きなチャンスにはリスクが伴うものです。失敗を恐れず、何事に対しても常に冒険心を持って飛び込んでいけば、それなりのチャンスが巡ってくるのです。

用語解説一覧

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