経験学習とは!?経験を学びにつなげる!人は仕事の経験からこそ学ぶ!

2021.01.19

「経験学習」とは?

(画像は弊社人材開発用語集より抜粋)

「経験学習」とは、自分自身が実際に経験した事柄から学びを得ることを指しています。ただ単に経験をするだけではなく、その経験を次に生かすために省察することでより深く学べるという考え方を、人材育成の領域において「経験学習」と規定しているのです。

経験学習の理論は、組織行動学者のデービッド・コルブ(D. A Kolb) によって提唱されました。これはレヴィン(K.Lewin)やピアジェ(J.Peaget)といった経験主義者の研究を発展させたものであり、コルブはこうした学びを、体系化・汎用化された知識を受動的に習い覚える知識付与型の学習やトレーニングと区別し、「経験→省察→概念化→実践」という4段階の学習サイクルから成る「経験学習モデル」理論として提唱しています。

「経験学習モデル」理論

人は何から学び、成長するのか――米・ロミンガー社が優れたビジネスリーダーの経験について調査したところ、7割が「仕事経験から学ぶ」と答え、後は「他人から学ぶ」が2割、「研修や書籍から学ぶ」が1割と答えました。教室で行われるような知識付与型の学習が、能力開発に資する部分はわずかに過ぎず、成長の大半は現場での業務経験に左右されるという結果が示されたのです。

ビジネスパーソンは、日々多くの業務を経験します。しかし当然のことながら、経験さえすれば誰でも成長できるものではなく、人材開発には「経験を通じての学習プロセス」が欠かせません。では、どうすれば経験から学べるのか。その拠り所となり得るのが、「経験学習モデル」理論です。

(画像は弊社人材開発用語集より抜粋)

■「具体的経験(Concrete Experience)」:その人自身の状況下、具体的な経験をすること。経験の場で視覚・聴覚・感情などによって物事を感知します。

■「省察(Reflective observation)」:自分自身の経験を多様な観点から振り返って内省すること。経験によって感知した事柄を深く振り返り、内面化します。

■「概念化(Abstract Conceptualization)」:そこで得られた教訓や気づきを他の状況でも応用できるような独自の理論「マイ・セオリー」に作り上げて、一般化・概念化すること。内面化により抽出された「気づき」をもとに、教訓や概括的な意味をつかみます。

■「実践(Active Experimentation): その理論を、新しい状況下で実際に試行すること。本質をつかむことにより、新しい条件や状況の下でのより応用的な実践につなげます。

具体的経験を出発点として、「経験→省察→概念化→実践」のサイクルを回すことで経験が知恵に変換され、人はより良く学ぶことができるというのが、コルブの提唱する経験学習理論の要諦です。

良質な経験

経験することが出発点とはいえ、日々のあらゆる経験が振り返りや内省に値しているとは限りません。人材育成の効果・効率を高めるには、学習を促す“良質な経験”を積む必要があるのです。良質な経験とは、端的にいうと“予測し得ない結果をもたらす経験”のことです。それは例えば、事業開発や事業再建などといった新規性が高いプロジェクトに参加したり、人事異動や海外勤務によって従来のスキルが通じない状況に直面したりすることで得られると考えられています。

そうした機会に恵まれなくとも、例えば日常業務において、“現在の能力の2割増し”くらいの適度な難易度を有する課題に進んで取り組んだり、懸命に手を伸ばして努力すれば達成できそうな高さに成果目標を設定したりすれば、成長につながる質のいい経験が期待できるのです。

良質な省察

経験の次の段階では、その結果を振り返り、なぜうまくいったのか、なぜ失敗したのかなどを自らに深く問いかけることが求められますが、このような省察のプロセスを、業務の傍らで行うことは容易ではありません。日々の仕事にどっぷりと浸かり切った状態では、なかなか自分自身を客観的に振り返れないからです。したがってこのプロセスでは、直属の上司やマネジャーなど、本人の成長をサポートする他者の存在が重要になります。マネジャーによる1対1のコミュニケーションやコーチングをきめ細かく実施するなど、本人が常に“違った視点からの問いかけ”を受けられる環境を整備することが有効だと考えられます。

良質な概念化

概念化においては、思考を手助けするツールが必要になります。それが既存の理論です。先人の知恵によって体系的に整理された既存理論を自分の状況に当てはめて、個別かつ具体的に解釈した上で発展させ、新しい理論を構築する必要があります。

良質な実践による検証

ビジネスパーソンにとっては、完璧な検証を追求するよりも、自分自身が腑に落ちることを大切にして、検証のサイクルを迅速に回してゆくことが重要になってきます。

用語解説一覧

【経営層向け】
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・オープン・ブックマネジメントとは?
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・コンフリクトマネジメントとは?
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・AQ:逆境指数とは?
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・EQ:こころの知能指数とは?
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・SQ:社会的知数とは?
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【マネジャー向け】
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