2021.01.07
コンピテンシーとは
(画像は弊社人材開発用語集より抜粋)
コンピテンシー(competency)とは、企業内で人材育成や評価基準、あるいは採用面接等を行う際に活用されている概念です。高業績者(ハイパフォーマー)に共通して見られる行動特性のことを意味しており、「ある職務や役割において、優秀な成果を発揮する特性」と定義づけられています。
例えば、社内で高い業績を上げている社員の専門的な技術や、そのノウハウ、また元々備わっている基礎的能力を詳細に観察し、どのような要因によってその人物が「仕事が出来る社員」となり得たのかを明確にするものです。つまり、この「コンピテンシー」を社員の行動基準や評価基準として活用することにより、社員全体の行動の質を高めていくことができるのです。
コンピテンシーの歴史
元々この手法は、ハーバード大学の心理学者D.C.マクレランド教授(David C.MaClelland)が中心となって、McBer社を含むグループとともに、米国務省から調査・研究依頼を受けたことが始まりです。1973年、学歴や知能レベルが同等の外務情報職員に、開発途上国駐在を命じたところ、駐在期間中に業績の差が見られたため、そのような差が出るのはなぜなのかを研究解明することが求められたのです。その結果、学歴や知識といったその人が既に持つ部分は業績の高さにそれ程相関性はなく、ハイパフォーマーには共通の行動特性がいくつか見られることが判明しました。そして、知識、技術、人間の根源的特性を含む広い概念として発表されました。
その研究の際に挙げられた行動特性は以下の通りです。
1.異文化に対する感受性が優れており、環境対応力が高い人
2.いかなる相手に対しても人間性を尊重して接する人
3.自ら積極的に人的ネットワークを構築することが得意な人
その後、コンピテンシーは米国を中心として、企業の人事システム構築に相応しいツールとして発展してゆきました。現在では、職種別に高い業績を上げている従業員の行動特性を分析し、その行動特性を評価基準とし従業員を評価することによって、従業員全体の質の向上を図ることを目的とした企業の人事考課制度として活用されています。
コンピテンシー採用の背景
従来型の日本式人材評価は、「協調性」「積極性」「規律性」「責任性」といった項目から構成され、従業員の潜在的・顕在的能力を中心に評価していましたが、能力が高いことが成果と繋がるわけではないため、評価と会社への貢献度がリンクしないことがありました。
これに対してコンピテンシーでは、「親密性」「傾聴力」「ムードメーカー」「計数処理能力」「論理思考」といった項目から構成される上、具体的な行動で評価するため、評価と会社への貢献度がリンクし易くなっています。コンピテンシーが、企業によって採用される理由は、企業自身が成果主義導入へ転換している背景があります。人事評価において業績や成果のウエイトを大きくすればするほど、或いは社員間の待遇格差を大きくすればするほど、評価の客観性が強く求められるのです。そこで、「業績・成果評価基準」と「適切な手続き」に基づいて構築された「能力評価基準」、つまりコンピテンシーが必要となってくるのです。
また、企業間の熾烈な競争環境の下、組織の生産性を高めなけば企業の存在自体が淘汰されかねない時代となった今、業績向上を目指したコンピテンシーを分析し整理することが重要となります。それを社員が実際の行動に移し、業績を伸ばしてゆく必要もあるのです。
コンピテンシーのメリット
(画像は弊社人材開発用語集より抜粋)
それでは、コンピテンシーにはどのようなメリットがあるのか、以下見て行きましょう。
(1)「求める人材」の明確化
社内の高業績者を調査・分析し、企業の「求める人材」の能力要件を明確にすることが可能になります。
(2)人事制度の「客観性」「透明性」「納得性」の確保
コンピテンシーを評価制度に反映させることで、客観的な評価基準の導入が可能になり、この基準に基づく個人の評価結果と高業績者のパフォーマンス水準を比較することで、評価結果の透明性が可能になります。
(3)社員の行動変革/意識変革の実現
自己の評価結果と高業績者の発揮水準とを比較したり、他者評価と自己評価とを比較したりすることで、具体的な自己啓発のポイントが明確になります。
コンピテンシーの今後
人事評価制度が『成果が上がったから評価する』から『成果を上げるために支援する』段階に進んでいく中、コンピテンシーも今後、人材選抜の道具から人材育成の手段へと活用法が広がってゆくと考えられています。
用語解説一覧
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