ハインリッヒの法則(ヒヤリ・ハット)とは!?コンプライアンス違反、不祥事を防ぐ!

2020.11.19

ハインリッヒの法則 (Heinrich’s law)とは

(画像は弊社人材開発用語集より抜粋)

「ハインリッヒの法則」は、労働災害の分野でよく知られている、事故の発生についての経験則の一つです。

1つの重大事故の背後には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故が潜んでおり、さらにその背後には、事故に至らなかったものの、事故につながっていてもおかしくない事故寸前の300件にも及ぶ異常が存在するというものです。この法則は別名、「ハインリッヒの災害三角形(トライアングル)定理」或いは「傷害四角錐(ピラミッド)」とも呼ばれています。

(画像は弊社人材開発用語集より抜粋)

法則の由来

この法則を導き出したハーバート・ウィリアム・ハインリッヒ(Hervert William Heinrich、1886年 – 1962年)は、アメリカの損害保険会社で技術・調査に携わる安全技師をしていた時に、5000件以上の労働災害事例を統計学的に調査したところ、「同じ人間が起こした330件の災害のうち、1件でも重い災害(死亡や手足の切断等の大事故のみには限らない)があったとすると、29件の軽傷(応急手当だけで済むかすり傷)と、障害のない事故(障害や物損の可能性があるもの)を300件起こしている。」という発見をしました。これがハインリッヒの法則、つまり「1:29:300の法則」です。また、この300件の障害のない事故は「ヒヤリ・ハット」と呼ばれています。

ヒヤリ・ハット

ヒヤリ・ハットとは、重大な災害や事故には至らないものの、作業中にヒヤリとしたり、ハッとした現象のことを指します。

ハインリッヒの法則によると、労働災害に至るまでには、その前に起きた突発的な現象にヒヤリとしたり、ハッとする経験が多くあるといいます。けれども、実際の事故に至らなかった場合、そのような些細な事象を軽視しがちになります。

つまり、大事故に直結していても何ら不思議ではない一歩手前の事例を発見することは、結果として事故に至らないために非常に重要なことなのです。ですから、日ごろから不注意・不安全な行動による小さなミスを減らし、ヒヤリ・ハット等の情報をできるだけ迅速に把握し、的確な対策を講じることが必要になります。

特に、製造業・建設業・運輸業・医療業界などといった、一歩間違えれば人の命に関わる大事故が起きる可能性のある業種においては特に、ハインリッヒの法則が広く浸透しています。また、あえて各個人が経験したヒヤリ・ハットの情報を公開し、蓄積または共有することによって、重大な災害や事故の発生を未然に防止する活動を実践している職場や作業現場もあります。

このような活動は、ヒヤリ・ハット・キガカリ活動とも呼ばれています。そしてハインリッヒの法則は、この活動の根拠にもなっています。

ハインリッヒのドミノ理論

さらにハインリッヒの指摘によると、この300件に及ぶヒヤリ・ハットの無傷事故の背後には、幾千件にも及ぶ「不安全行動」と「不安全状態」が存在しています。

ハインリッヒは75,000事例の事故データの分析を元に、レポート「The Origins of Accidents」を発表し、労働災害のうち98%の事故は回避可能なものであり、88%は雇用者の不注意(不安全行動)により起こり、10%が労働環境上の問題(不安前状態)に起因するものであると示しました。また、不安全行動は不安全状態の約9倍の頻度で出現していることにも言及しています。

労働災害における段階を理論化したものがドミノ理論です。ドミノ理論を構成する5つの要因は、以下の通りです。

環境的欠陥 ②管理的欠陥 ③不安全行動・不安全状態 ④事故 ⑤災害

これらの要因は連鎖しています。この連鎖するドミノのうち、1つを除去すれば連鎖を食い止めることが出来ると考え、食い止めるべきは不安全行動・不安全状態であると主張しました。災害を起こさないためには事故を起こさないこと、そして事故を起こさないためには不安全行動・不安全状態をなくすことが大切になってくるのです。

現代におけるハインリッヒの法則の活用とは

ハインリッヒの法則は、現代のオフィスワークでも活用されています。例えば「経営危機を招くコンプライアンス違反の重大な事案1件の背後には、不祥事のきっかけとなる多数のヒヤリハットが隠れている」ことや、「顧客からのクレームが1件だけでも、その背後には同様の不満を抱いている多数の顧客が潜んでいる」ということを予測することができます。このハインリッヒの教訓を知った上で活用する事は、多くの職場において有効な改善手段となります。

用語解説一覧

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